さて、前回記事からさらに半年。娘はもう3歳になってしまった。
1歳のころの可愛さも忘れ難いが、正直3歳になってもまだまだ同じようなことをやっていて、さらには自分の考えを喋るもんだから面白い。
クルーズ船の旅7日目は青森県。私も行ったことがない初めての土地だ。さらには「ねぶた祭」が見られる時期なので一番気合が入っていた。
朝から娘は、昨晩の船上のお祭りでもらったヨーヨーをかじっていて、いつ破裂するか不安だったのですぐに片づけた。いつも通り朝ごはんを食べたら出発だ。今回はすでに昨日から国内に入っていて、出国手続きなどが不要、さらにはタクシーがクルーズ船を降りたすぐそこにバンバン走ってくるから出だし好調だった。
まずタクシーで目指すは青森県立美術館。奈良美智の作品が多く飾られていて、大きな犬の彫刻は混んでくる時間になるとみるのが大変そうだったので、朝一で。
開館を待っている間に空には大きなハロ現象が。とはいえハロが見えると天気が下り坂になるともいわれているので若干不安に。ハロには全く興味のない娘は、入り口の横にある蜘蛛の巣にいる蜘蛛をずっと見ていた。

まず入館してすぐに広い部屋にシャガールの大きな作品が3点飾られている。娘がこれまでに見たことがある絵の中で一番大きいだろう作品だ。指をさして「鳥がいる!」と何度も言っていた。

他の展示エリアではきらきら光るガラス彫刻があると感動し、大きな黒い彫刻があると「怖い!」と言って逃げ出した。うるさくなるとさすがに迷惑だからと思っていたが、そもそもお客さんが少ないし、娘もすごく静かに見て回っていた。1歳児とは思えない空気を読む力!
奈良美智の作品と子どもはやはり既視感がある。

大きな犬(あおもり犬)を見るときには、本来階段を上り下りして外から回るような形でたどり着かなければいけないらしいのだが、ベビーカーだからということでショートカットの道を係りの方が開けてくれた。
大きな犬に若干ビビり気味の娘。ここは人気フォトスポットだが全然人がまだたどり着いていなくてゆったり見ることができた。ねぶた祭初日とはいえ、意外と観光客がいない不思議。

美術館を後にして、市場で寿司などを食べ、いったんクルーズ船へ戻った。ここまで特に言及していなかったが、青森でも夏はかなり日差しが強く暑い!汗だくになった体を一度冷やし、娘にはレモン柄の甚平を着せて夕方前に再出発。
かなり調査をした結果、ねぶた祭りのスタート地点の目の前にある居酒屋の席の予約ができたのだった。食べ終わって外に出ればもう祭りが始まっているという最高の立地。外の様子を音で聞きながら、始まっているけどもまだ盛り上がってなさそうな雰囲気だったので、結構ゆったり飲んで、個室だったから娘も少し動けたしいろいろよかった。
コロナ明けの旅行だったからおそらく空いていたんだと思うが、今年行くという話になったらどれくらい混んでいるのだろう。
店の外に出ると目の前では大きな大きな太鼓が並んで人に引っ張られている。ドンッドドッドッドン!一定のリズムに娘がノリノリで踊る。こんなに自由であれたらどれだけ良いことか。

続いてやってくるねぶた。大人が見ても大迫力。
そして全く混雑していなくて、最前列にある予約席のすぐ真後ろに立ってみることができた。皆ねぶたと一緒に全移動するわけでもないけど、自然と時間が経つと人が減り、また気づくと人が増え、を繰り返し、どこかのタイミングで皆移動しながら見ているのだな、という感じ。
立ち止まって見ているのは観光客だけな気がした。
体に直接響いてくる太鼓の音、目の前で輝く大きなねぶた、重たいねぶたや太鼓を運ぶ人の掛け声、周りの歓声、すべてが夏の暑い空気と混じって、これが祭りだ・・と思った。娘の目にはどう映ったかな。ずっとずっと太鼓の音を聞いてはしゃいで飛び跳ねていた。
正直音の大きさや見た目が怖いなどがあったら早めに退散するしかないと思っていた。逆だった。帰りたくないって最後はねぶたが全部はけた後、道路に飛び出て一人で飛び跳ねて走り回ったり、テンションが上がりすぎておかしくなっていると思うほどだった。

記憶には残らないのはわかっているが、このリズムが絶対刻まれたことを体は覚えているだろうなと思った。それくらい、今思い出しても、体が震えそうになるくらい、感動的だったから。

必ずまた来たい。
その日は気づいたらへとへとで、どうにかクルーズが出発する前までに戻ることができた。タクシー乗り場で帰りたくなくて駄々をこねた娘は、駅のロータリーに大の字で寝そべったが、空に星が思いのほかたくさんあって「ほし!」と叫んでいた。