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おふねにのってゆーらゆら 1

船のプール 国内旅行

2023年2月、次年度の保育園落選が決まりがっかりはしたものの、「あぁやっぱりな」という気持ちでいた。自分たちの点数と地域の倍率の高さ等を加味して予測するに、よっぽど応募者が少ない状況ではないと入園を勝ち取ることができなかったからだ。勝ち取るってなんだって話なんだけど。

去年から待機している人も含めると、それ以降も入園が決まることは至難の業であることも大体予想がついた。入れることになったらラッキーだけど、すでに来年の入園を目指すことに考えを切り替えていた。

話の始まりは忘れたし、きっかけはたぶんどうでもいいことだったと思う。私と夫のなかで急に「クルーズ旅行したくない?」という話になった。ちなみに2人の新婚旅行はイタリア、スペイン、フランスのクルーズだった。

まず、今後も保育園に受からないと思うので私が長期休暇状態であるだろうこと。夫はもともと頑張れば長期休暇は取ることができ、テレワークが可能になったことで休み中でも外から仕事の状況をチェックすることもできること(休みなので休むべきだがそうもいかない瞬間もあり)。
世の中はその時点ではまだコロナ禍だったけど5類移行の話と、世界的に見たらもうそろそろ行動制限は解除されそうな雰囲気だったこと。
そして何より旅行業界が下火になっておりクルーズ旅行もかなりの値下げをして運行をしようとしていたこと。

われわれの都合に合わせたようにいろいろなことがうまく重なって、2023年3月、クルーズ旅行の代理店の方にいろいろ相談した結果、九州から韓国、そして東北へ行きねぶた祭りを鑑賞するルートのダイアモンドプリンセスに乗船することにした。コロナを国内で大きく知らしめるきっかけになった船だ。
この船だったから感染が拡大したのではなく、感染症に対する予防の知識が全員なかったから拡大したのであって、同じ会社の船であることは全く気にならなかった。

そして出発の2023年7月末。8泊9日という長い旅路。
船内で洗濯ができるものの、出来なかった時のことも考えると荷物もそれなりになった。さらにはクルーズでは「フォーマルナイト」といってフォーマルな恰好をして夜を過ごすという日が2回もある。そのための服やら靴やら小物やらを追加するため、通常の泊数分の荷物よりも多くなった。

娘に関しては、ちょうど離乳食が終わるか終わらないかくらいの時期で船内で何か食べられるものがあるかが不明だった。船では離乳食の提供はあると書いてあった。しかし離乳食も終わる直前だと、もうどろどろの食べ物は食べないから、そのいわゆる「離乳食」を出されると困ってしまう。とりあえず月齢に合ったベビーフードを日数分持って行った。これも結構重たかった。

ほぼ国内旅行だから足りないものがあったら寄港地で買えばいいとも思ったが、旅は何があるか分からない。世界一周中に学んだ当たり前のようで意外と実践できない教訓から「念の為」の荷物を持っていくタイプだ。もちろん船だからというのも大いにあるが。

ある程度は事前に宅急便で送り、当日必要なものを詰め込んだカバンを持っていざ出発。

出航する横浜の大さん橋ふ頭につくと、ダイアモンドプリンセスがどーんと停まっていた。しかし新婚旅行で乗ったロイヤルカリビアンという船は本当に度肝を抜かれるでかさだったので、それより小さいこの船を見ても意外と感動が薄い我々夫婦。でも娘にとっては初めての大きな船。たぶん船という認識がないまま、「なんだこれ?」という顔で凝視していた。

ダイアモンドプリンセス

窓なし部屋を予約していたが、窓あり部屋にアップグレードされていた。それにより旅の満足度がだいぶ上がった気がした。
遊んで寝るだけだから気にしなくていいや(もちろん最安だからというのもあり)、と思っていたけど、部屋に入って実際に見ると、自然光が入ってくるのは子供のためにも良い気がした。その後の滞在中に窓辺が娘のお気に入りスポットになったこともあり、今後クルーズ船に乗ることがあったら必ず窓ありの部屋にしようと思ったのだった。

船に入るとすぐに救命胴衣の確認、部屋に不備がないかの確認、そして各自決められた方法で避難訓練をする。それが終わってやっと好きなように船内を探検することができた。
すべてが終わって16時ごろデッキに出ると、海からの風と、日が落ちる準備をする手前くらいの雰囲気があまりに心地よく、これから長い旅に出るんだというわくわく感が増した。

船上にて

娘は初めて見るものばかりで目に見えてテンションがあがっていた。大きな魚のモザイク絵で装飾されたプールや、広いデッキから見る横浜のビル群、船内に複数ある大きなタッチパネル、その中で泳ぐ魚たち。
思ったより外国の乗客やスタッフが多く、聞きなれない言葉。外国人も初めてだけど、意外にも見たことで驚いたりすることはなかった。見た目が違う、という認識がまだないのかもなぁ、最初はみんなこうなのに成長すると失われるものの一つかもしれない。

ぐだぐだな感じで進められる出航セレモニーを横目に、ふ頭のターミナルでお見送りにきている人たちに手を振り続けた。知らない人たちだが。誰にでも手を振って、行ってきますを言いたい気分になるのであった。

お見送りの人に手を振る

そして乗船後初めての夕飯。娘が食事の場でおとなしくできるか、というのがかなり心配だった。コース料理が出てくるレストランで、食べられるものがあるかどうかも不安だったが、泣き叫ばれると一番困る。最悪ブッフェがあるから、食事にありつけないということはないのだが、せっかく船に乗っているから、という気持ちが出た。

セッティングされたテーブルにつくとすぐに我々はフォークやナイフやグラスなど触ったら危ないものをすべて娘の前から遠ざけた。それも知らぬ顔をしてやらないと、興味を持たれてしまうから静かに淡々とだ。
食前にパンが運ばれてきた。娘がそれを食べたいようだった。普通のロールパンだったから食べられると判断し渡すとずっと食べている。家でパンを食べさせたことはほとんどなかったけど、ずっと食べていた。びっくりすることに小さいパンだけど1個食べきって、2個目を食べようとしている。

とりあえず様子見で食べさせているとさらに半分食べた。その後買ってきたベビーフードを食べさせようとすると断固拒否。我々の皿から食べられそうなものを少し与えたり、単品で和食も頼めたので少し頼んで食べさせたが、ベビーフードだけは絶対に食べなかった。そしてそれはこの旅中ずっとそうで、家に帰ってからも2度と食べることはなかった。

パンを食べる娘

クルーズ船のパンをきっかけに離乳食を卒業してしまったのだった(大量に買ってきたベビーフードはその後姪っ子にあげて無駄にならずに済んだ)。
まったく驚きだった。もともと食がほそく、手作り品もベビーフードもそこそこしか食べない娘が、自ら好んで食べていた。滞在中レストランでは同じパンが常に出て、常に喜んで食べていたので、私はこのパンを買って帰りたいくらいの気持ちになっていた。

パンのおかげか、船が楽しいというテンションの高まりか、娘はずっとスタッフの人に笑いかけては、相手からリアクションをもらい楽しんでいた。楽しくて楽しくて、ずっとそうやって周りのお客さんにも笑いかけて、パンを食べてうれしくて、ぐずることなく夕飯を終えた。初日から奇跡である。
しかしそのテンションのまま部屋に戻り、シャワーを浴びて布団に入っても何やら嬉しそうに転がったり笑ったりしていた。さすがにもう寝てほしいと思ったころに、やっと電池が切れて眠っていた。

本当に楽しかったんだなぁ。それだけで来てよかったと思えた。

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